読書: 慰安婦問題という問い 大沼保昭・岸俊充 勁草書房 2007年

東京大学の法学部と公共政策大学院の合同ゼミで行った講演および質疑応答をまとめた本。この本に収録されている講師は、和田春樹(東京大学名誉教授)、秦郁彦日本大学講師)、吉見義明(中央大学教授)、上野千鶴子東京大学教授)、長谷川三千子埼玉大学教授)、石原信雄(元内閣官房副長官)、村山富市(元首相)の計7名。
左右、というか、反日論者と実証主義者とフェミニストがそれぞれの意見を述べているので面白い。特に長谷川三千子氏の非常にロジカルな論説には非常に共感を覚える。

しかし、一番強烈なのは、石原信雄氏の編。
反日派(自虐派)の人達が常にその論拠として使う「河野談話」がどうやってできたか、当時副官房長官でまさにに談話作成に携わっていた本人が説明。
石原氏によると、
第一次調査が不十分であった為、第2次調査を実施。
その第2次調査はかなり徹底的に実施しており、国内、海外(米国連邦政府)、途中で本土復帰した沖縄の資料等、かなり徹底的に調査した。
その結果、文章とか旧軍関係者からの証言からは、「強制的に」慰安婦にしたというものは得られなかった。そういう通達も出てこない。有無を言わさず、本人が抵抗しても連れて行け、というような文章は出てこなかった。出てきた文章は、衛生に注意、とか、環境をよくするように、とか輸送に便宜を図る、とかの軍関係の通達のみ。であった。
しかし、「これについて韓国政府が非常にこだわりまして。。」
韓国政府曰く、名乗り出た元慰安婦達が強制的に慰安婦にさせられた、と言っているので日本政府としてもその点を認めてくれ、と強い主張があった。
困った政府は、(ここからがスゴい)、
「そこで(宮澤)総理や官房長官とも相談しまして、この本人の証言を判断材料として採用するかしないか、最後のいわば総理の決断のようになりました」
「いろいろな政治的な影響を受けない状況、反日運動を行っている団体等の影響を受けない静かな環境環境下で、韓国政府協力のもとにソウルで何人かの人からの聞き取り調査を実施し」
「その結果、彼女達の証言から、強制的に慰安婦にされたことが疑いようの無い人が何人か出てきた訳です」
「いずれにしても、文章によって裏づけることはできなかったんですけれども、被害者となった慰安婦の複数の方の証言をいただいて、それを分析・検討した結果、心証を得たわけです」
「そこで、官憲等が直接これに加担したこともあったことが明らかになった、と断言しました」
あらあら。。。

その後の質疑応答において、その最も重要なヒアリングの内容が10年以上たってもオープンにならない理由を聞かれて、
「調査は韓国政府に協力お願いして行ったのですが、それはオープンにしないという条件なんですよ」
「それは絶対に門外不出です。韓国政府との固い約束ですから。」
人選するとき韓国政府のご協力をいただいたんですが、当然のことですが、(反日)運動体と一緒になって行動している人は避けたわけです」

そして、
「(極東裁判の)評価はともかくとして、とにかく戦争にもっていった当時の為政者の責任は戦争の正当性の問題以前にいかなる意味でも正当化できない」と言い放つ。

なんて人達なんだ。。こんな人達が国を動かしているのか。
韓国政府そのものが反日主義。あちらも、なんだ、なんでこんなにスムーズにのってくるんだ??って不思議だったでしょうね。
これなら他の国々が、日本との交渉なんてちょろい、と思っても不思議はない。
交渉事においては普通のビジネスマンにもなれない。
これが、竹下、宇野、海部、宮澤、細川、羽田、村山の7つの内閣で7年余にわたり官房副長官を務めた方です。凄いな、日本の政治レベル。。。

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